(初出:23/06/06)
King Gnu初のスタジアムライブツアー「King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY」が6月3日(土)-4日(日)の横浜・日産スタジアムでファイナルを迎えた。
2020年1月、3rd ALBUM「CEREMONY」リリース直後に直面した新型コロナウイルスの影響の中、観客収容率制限や声出し制限のもと、LIVEの開催を重ねてきた、King Gnu。
「CLOSING CEREMONY」と銘打ち、ALBUM「CEREMONY」を締めくくるLIVEを、バンド史上初となる屋外大型スタジアム、大阪・ヤンマースタジアム長居、横浜・日産スタジアムにてそれぞれ2公演ずつ、トータル4公演で計トータル23万人を動員、収容率上限100%・声出し可能な形で開催。さらに今回はKing GnuのLIVEでは初めて、ストリングスとホーンセクションが加わった特別編成でLIVEを行った。
■オフィシャルLIVEレポート:
全4公演で計23万人を動員したKing Gnuによる初のスタジアムライブツアー『King Gnu CLOSING CEREMONY Stadium Tour 2023』の千秋楽が、2023年6月4日に横浜?日産スタジアムで開催された。数日前の天気予報を覆した奇跡の快晴である。しかも超満員での声出し解禁ライブだ。
7万人を収容する巨大スタジアム。ステージセットでキーとなる赤色はセレモニー感を打ち出し、会場中にフラッグがはためいた。スタジアムライブが解き放つ高揚感を倍増させていく。左右に展開される巨大LEDモニター。ステージ奥には黄金の聖火台が鎮座している。
そう、本公演は、タイトルともども2020年1月15日にリリースした3枚目のアルバム『CEREMONY』に起因する。リリース直後、パンデミックの影響のために延期となった2020年初頭に予定されていた幻のツアー。しかしながら、様々な制約を乗り越え、その後開催された2度にわたる全国ツアーや東京ドーム2デイズ公演を経て、さらに大きな群れとなったKing Gnuは現時点での集大成として本公演=クロージングセレモニーを行ったのだ。それは、この3年間の社会の閉塞感を塗り替えていく、そんな気概を感じられたライブとなった。
オープニングは、ストリングスのチューニング音からはじまり、荘厳なオーケストレーションを醸し出す「開会式」からスタート。今回、ステージにはメンバー以外にもホーン&ストリングス隊が演奏に参加。より奥行きの広いサウンドを豊潤に繰り広げていく。聖火台モニュメントへの輝かしい聖火の点火。LEDモニターには、アニメーションで描かれた聖火台に揺れる炎が指揮棒を振って舞っている。
この日に最もふさわしい曲「飛行艇」では、屋根のないスタジアムで大空へ向かってドッシリとロックビートを解き放つ。“どんな夢を見に行こうか”という歌い出しの本作だが、まさに夢の光景が眼前に広がっているのだ。
勢喜 遊(ドラムス・サンプラー)はサングラス越しに笑み、井口 理(ボーカル・キーボード)は左手を頭上に掲げ、新井和輝(ベース)はビートと呼応しながら揺れ、常田大希(ギター・ボーカル)はゆっくりと客席を見回している。印象的なワンシーンだ。
間髪開けずに「Tokyo Rendez-Vous」を披露。井口による「みんな元気? 元気だね。ここでMCをするつもりはなかったんだけど。せっかくの千秋楽だからね。来てくれてありがとう。俺らもさ、6,7年前は下北沢や渋谷のライブハウスで、誰も聴いていなかったようなところで演奏してたんだけどさ。今どうよ? 7万人が聴いてくれていますね。ありがとう! みなさんに提案なんだけど、今日という日をこの先の人生で何度も思い出したくなる日にしませんか? どうか今日はよろしくお願いします」という、第一声となるMCを解き放つ。
野外に似合うビートの効いたパンキッシュなアッパーチューン「Teenager Forever」を皮切りに「BOY」、開放感でいっぱいな「雨燦々」など誰もが知るヒットチューンを惜しげも無く立て続けにプレイ。ときには常田、井口、新井がひとつのマイクに向き合ってシャウト、オーディエンスへボーカルを委ね合唱が起きるなど涙腺崩壊な展開だ。
そして、疾走感溢れるリズムが、夕涼みのような風の気持ち良さとリンクする「小さな惑星」と呼応し、会場の空気をよりポップに染め上げていく「傘」を披露。しかしながら今日は、時の流れを早く感じる。楽しい時間はあっという間とはまさにこのことだ。King Gnuはとにかくあらゆる面で情報密度が濃い。なのに想いはシンプルで直球だ。それが理由のひとつなのかもしれない。
長めのMCタイムでは「いい日だね、今日もいい空だねえ」と井口が空を見上げながら語り、King Gnuらしい距離感の近い雑談のようなトークを繰り広げていく。昨日6月3日公演では「東京じゃない人どれだけいる?」と、オーディエンスがどこの地域からやって来たかを手をあげさせ、今日は「あらためましてKing Gnuです」と挨拶し、タバコに火をともし、続けて常田もタバコを吸いはじめて沸く会場。井口が「今回はほんとに波乱のスタジアムツアーになっちゃいまして。大阪もリハができなかったり。横浜もゲネプロが出来なくて。台風で3日の昼ごろまで雨が降っていて。でも、なんとか出来ましたね!」と話題を広げていく。
MC中もずっと、生BGMのごとくアコギを爪弾いていた音楽に寄り添う常田。そんな柔らかい雰囲気そのままに「ユーモア」、そしてホーリーな雰囲気漂う「Don?t Stop the Clocks」をメランコリックにプレイ。ここからはヒットチューンとして知られる「カメレオン」、そして常田がピアノソロで、東京藝術大学出身の先輩である坂本龍一への追悼として「Merry Christmas Mr. Lawrence」の一節をアレンジを加えながら心を込めて演奏。そのまま、壮大な雰囲気を持つ「三文小説」へと没入感高いハイクオリティーな演奏へ突入。本日のハイライトのひとつだ。気がついたら日没時刻となっており、会場は薄暗くなってきたところで最初期に生み出されたアブストラクトかつドープなナンバー「泡」。淡いレーザー光線による輝きが妖しげに美しい。そして、ドープなインスト曲「幕間」を経て、突如アップテンポに感情が解き放たれる「どろん」、「Overflow」など人気チューンを次々にドロップしていく。
ここで再びMCタイム。新井が10数名のホーン&ストリングス隊を紹介しつつ、井口が「後半いきますか? まだまだいけますか?」と煽る。
King GnuオリジナルのJ-POPセンスの躍進のきっかけとなった「Prayer X」が演奏され、勢喜によるドラムが映えるイントロダクション、スモーク濃いめに焚かれアッパーな常田のラップが繰り広げられていく「Slumberland」へと続く。さらに、スタジアムが似合うビートの効いた「Stardom」では、会場の温度があがるほどにステージに設置された数々の炎が一斉に燃え上がりまくるなど、かつてない派手な演出へ。勢いそのままに、ビートが研ぎ澄まされたロックチューン「一途」。ドラマティックな「逆夢」へと駆け抜けていく。繰り返すが、あっという間に時間が溶けていくのだ。
そして待ちに待った、常田がメインボーカルを務める「壇上」のライブお披露目である。アルバム『CEREMONY』でもキーとなったナンバー。知る人ぞ知る楽曲だ。歌詞は、まるで数年後の自分たちの心情に振り返ったかのようなセンチメンタルな世界観。そんな想いとリンクするかのように走馬灯のごとくこれまでのバンドの歴史がメンバー写真とともに矢継ぎ早に巨大LEDモニターに映し出され、心が真っ白になっていく。頭も空白のまま、本編最後となるサイケデリックなポップバラード「サマーレイン・ダイバー」へ。オーディエンスが自発的にスマートフォンのライトを点灯し、会場中に光が瞬く大海原のようなシーンへと一変。感情が追いつかないほどの大感動だ。声出し解禁、オーディエンスと合唱しながら、メンバーによる満足度の高い笑顔とともに大団円を迎えていく。
アンコールを経て、ステージでは常田がチェロを独奏。アヴァンギャルドかつアカデミック、色気のある高貴なプレイ。パーカッシヴな弦の響きに目が耳が離せない。
そのまま、King Gnuの代表曲と言っていいだろう「白日」を披露。透明感ある伸びやかな歌声が美しい。そしてラストMCタイムへ。井口による、オーディエンスへの感謝の言葉「ありがとう! 楽しかったね。あとちょっとだけ付き合ってもらっていいですか? ここに7万人の人がいて。それぞれ生活があって。せっかくなら7万人の心の歌を聴きたいじゃないですか? 大きな声で歌えますか?」と、オーディエンスへ問いかけた。
そしてラスト2曲。まずはKing Gnuファンが最も愛する「McDonald Romance」を4人のコーラスワークが堪能できるバージョンで演奏。オーディエンスの大合唱とともに、会場にほんわかした暖かみが広がっていく。そして、ラストは井口による「盛り上がろうぜ!」という煽りに続けて「Flash!!!」。超絶アッパーなロックチューンによって、この日最強のハイライトが繰り広げられていく。高揚感でいっぱい、凄まじい熱量がバンドとオーディエンスの垣根をなくし、スタジアムに集まった全員の心が一体化していく。幾千に宙を飛び交うレーザービーム、そしてステージ上空に舞い上がる花火とのシンクロがヤバい。ヤバすぎる。
キング率いるヌーの群れは、仲間を巻き込みどんどん大きくなってきた。今回、最多キャパシティーとなる7万人スタジアム・ライブの成功。希望に満ち溢れた最新章のページがめくられたのだ。ヌーの群れの旅は今後も続いていく。
テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
SET LIST
M0 開会式
M1 飛行艇
M2 Tokyo Rendez-vous
M3 Teenager Forever
M4 BOY
M5 雨燦々
M6 小さな惑星
M7 傘
M8 ユーモア
M9 Don’t Stop the Clocks
M10 カメレオン
M11 三文小説
M12 泡
M13 幕間
M14 どろん
M15 Overflow
M16 Prayer X
M17 Slumberland
M18 Stardom
M19 一途
M20 逆夢
M21 壇上
M22 サマーレイン・ダイバー
【ENCORE】
M23 閉会式
M24 白日
M25 McDonald Romance
M26 Flash!!!
※公演概要及び動員人数:
King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY
・5月20日(土) 大阪・ヤンマースタジアム長居 開場16:00/開演18:00
・5月21日(日) 大阪・ヤンマースタジアム長居 開場16:00/開演18:00
・6月3日(土) 横浜・日産スタジアム 開場16:00/開演18:00
・6月4日(日) 横浜・日産スタジアム 開場16:00/開演18:00
ALL SOLD OUT
大阪各日約4万5千人、横浜各日約7万人
トータル約23万人動員
■King Gnuプロフィール:
東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Guitar/Vocal)、勢喜遊(Drums/Sampler)、新井和輝(Bass.)、井口理(Vocal/Keyboard)の4名体制へ。
SXSW2017、Japan Nite US Tour 2017出演後、2017年4月、バンド名をKing Gnuに改名し新たに始動。独自のポップセンスと色気が凝縮されたトーキョー・ニュー・ミクスチャーと称されるサウンドはもとより、FUJI ROCK FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVAL等大型フェスへの出演、盟友クリエイティブレーベル「PERIMETRON」と制作するMV・アートワークで注目を集め、LIVEチケットは毎回即完。音楽・映像・アートワーク、LIVE全ての面において、唯一無二の世界観を築きあげている。
2019年1月にALBUM「Sympa」でメジャーシーンに活動の幅を広げ、翌2月に配信リリースした「白日」がスマッシュヒットを記録。ダウンロード/ストリーミング/YouTubeでのMV再生を中心にデジタルフィールドで数々の記録を樹立した。以降も「飛行艇」「傘」「Teenager Forever」と数々の企業とのタイアップコラボレーションによる配信リリースで連続ヒットを成し遂げ、それらを収録したALBUM「CEREMONY」はオリコン週間ランキングで1位に輝き、その後もロングセールスを記録。50万枚を超える大ヒットとなり、名実ともに日本を代表するロックバンドの一つに成長を遂げた。2021年はFUJI ROCK FESTIVALでヘッドライナーをつとめたのち、年末に向けて「BOY」「一途」「逆夢」を怒涛のリリースラッシュでシングル作品を発表。『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌/エンディングテーマ「一途・逆夢」はバンドとして初めてオリコン週間シングルランキングで1位を記録(2022年 オリコン年間合算シングルランキングでも1位を記録)。DL/STもオリコン・ビルボードをはじめApple Music,Spotifyなど各所でワンツーフィニッシュを記録しロングヒットを継続中。
さらに、2022年最初のリリースとなった「カメレオン」(フジテレビ1月期月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』主題歌)は先行配信されるやいなや各サイトで軒並み1位を記録。各配信サイト、オリコン、ビルボード等数多のランキングで1位を独占、総計60冠以上に輝く実績を残している。これにより先述の白日のストリーミング5億再生を筆頭に10曲以上が1億再生を突破し、その後2022年後半もTBS日曜劇場主題歌「雨燦々」、2022NHKサッカーテーマ「Stardom」と精力的にリリース。そして、2022年11月には始動5年目にして初の東京ドーム2DAYS公演を行った。
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