(初出:24/12/03)
先月11月19日(火)にWEB漫画サイト「となりのヤングジャンプ」(集英社)で連載中の漫画『超人X』(著・石田スイ)とのコラボ楽曲「Wannabe」(ヨミ:ワナビー)を配信リリースしたばかりの、秋山黄色。
その秋山黄色の全国ツアー『NON-REM WALK TOUR』が12月1日(日)、東京・豊洲PITでファイナルを迎えた。
4thアルバム『Good Night Mare』を9月25日(水)リリースした秋山。今回のツアーでは、バンド編成で全国10ヶ所をまわり、アルバム収録曲を中心に披露した。以下、そのライブレポートとなる。
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Text by 蜂須賀ちなみ
『Good Night Mare』はタイトル通り悪夢をモチーフにした作品で、楽曲には秋山の死生観が刻まれている。ライブの冒頭では、希望に満ちた物語を朗読する音声がノイズまみれになり、断末魔の叫びが会場に響くなど、悪夢を思わせる演出があった。しかし秋山がリスナーに届けたいのは絶望ではない。限られた命、全ての物事はやがて無に帰するという真理への抵抗として、音楽という娯楽に尽くし、爆音を鳴らしては心から笑える時間を創造している。ツアーで1曲目に演奏されたのは「SCRAP BOOOO」。不穏な空気を断ち切るギターカッティングをきっかけにライブはスタートし、まずはアッパーチューンが矢継ぎ早に演奏された。バンドがリアルタイムで鳴らす肉体的な音像に、デスクトップ上の遊びと実験の産物である同期の音を掛け合わせることで立ち上がる刺激的なサウンド。フロアは興奮の坩堝と化す。
今使っているイヤモニは今日届いたばかりのもので、耳を完全に塞がなくて済むのだと語る秋山は、「人生の中で一番面白いのは観客の歓声を聴くこと」と断言。豊洲PITでのイベントに出演したことはあるがワンマンは初めてということで、MCでは、観客でいっぱいのフロアを視界に収めながら、「想像以上に感無量でございます。ありがとね」と伝えた。全身全霊で歌い、ギターを弾きまくる秋山は、観客に対して、自由に楽しんでほしい、もっともっと楽しんでほしいと訴え続ける。一方、ライブ中に出る「やろうぜ」「歌おうぜ」「笑おうぜ」といった言葉は、自分に向かって言っている節もあるという。必要以上に明るく振る舞ってみたり、周りの人と比べて「なんで自分は上手くできないんだろう」と思うこともあったりする――。そんな等身大の告白に共感を覚えた人も多かったはずだ。
「そういう気持ちを必要以上に塗りつぶさず、持ち合わせられたら強いんじゃないかと思います」。過去作からの「夢の礫」「日々よ」はそんな言葉とともに届けられ、『Good Night Mare』収録のバラード「SKETCH」にも同様の想いが込められた。魂の歌だ。自分の弱さを嫌になるほど見つめ、挫けそうになる心を思いやりに変え、他者に手を差し伸べられる人は強い。2年半に及んだ『Good Night Mare』の制作、そしてこのツアーを境に秋山の歌の質、説得力は明らかに変わった。「ナイトダンサー」で〈涙の数を世界がずっと見ないフリしている〉と歌ったあとの「俺の音楽だけは絶対に見てるから!」という言葉、「負け負けの負け」で特大のシンガロングを受け取ったあとの「世界一のファンだ!」という言葉も、聴く人の元へすごいスピードで飛んでいく。フロアには拳を上げて受け取ったぞと伝える人や、グッと立ち尽くし言葉を噛み締めている人がいる。
本編ラストのMCでは秋山の死生観が改めて語られた。いわく、14歳の頃に、人生は“約80年で集めた全てを手放して死んでゆけ”という設計だと気づいて以来、「全部消えるなら意味ないじゃないか」という諦観とともに生きていると。その考えで行くと「じゃあ俺は何のためにギター上手くなった?」「何のために曲を書いている?」「どうして日々やさしくできる?」という話になるが、最近は「意味を集めることが俺にとっての抵抗なんだ」と思っていると。今ここにいる人も、ライブが自分にとって意味があるから来ているはずだと。意味を集めた先でどうなるかはまだ分からないが、逆転の余地が残されているということが自分にとっては希望なのだと。
「孤独な人だけに効く毒、悪い冗談のような曲を作っていきたい。手を抜かず笑っていきたいよ。俺の今の全部を歌いますから。どう聴いてくれても構わない。何かになりますように、と願うばかりです」
ラストナンバー「生まれてよかったと思うこと」には、そんな想いが託された。秋山は歌のない箇所で鍵盤を無規律に鳴らし、不協和音が生まれていく。清廉なサウンドの中に生じる歪み。神のシナリオに抗おうという人間的な営み。生命力の充満するライブハウス。ここで燃え尽きても構わないという刹那的な生き方ではない。自分や目の前の人の命を未来へ繋ごうという意思を持って全てを注ぎ込み、今この瞬間を輝かせるようなボーカルだ。この曲を歌い終えたあと、秋山は観客に「俺がいる限り大丈夫。安心してまたライブ来いよ」と伝えていた。『Good Night Mare』と『NON-REM WALK TOUR』を経て、秋山黄色は真のギターヒーローになった。そう実感させられたツアーファイナルだった。
☆『秋山黄色 NON-REM WALK TOUR』SETLIST
- SCRAP BOOOO
- ソーイングボックス
- ソニックムーブ
- FLICK STREET
- AYATORI
- シャッターチャンス
- PUPA
- Lonely cocoa
- 夢の礫
10.日々よ
11.Caffeine
12.やさぐれカイドー
13.ナイトダンサー
14.SKETCH
15.負け負けの負け
16.生まれてよかったと思うこと
-encore-
Highway Cabriolet(赤い公園カバー)
吾輩はクソ猫である
■リリース情報①:
秋山黄色
配信リリース
「Wannabe」
11月19日(火)リリース
▽STREAMING / DL :
https://erj.lnk.to/NxIoM3
▽秋山黄色×『超人X』by 石田スイ 『Wannabe』【『超人X』 コラボMV】
■リリース情報②:
秋山黄色
4thアルバム
『Good Night Mare』
2024年9月25日(水)発売
▽購入URL:
https://erj.lnk.to/rIajNQ
▽配信URL:
https://erj.lnk.to/GrA9zR
■秋山黄色 プロフィール:
1996.3.11生まれ栃木県出身。楽曲の全てを手掛けるソロアーティスト。中学生の頃、TVアニメ「けいおん!」に影響されベースを弾き始め、高校1年生の時に初のオリジナル曲を制作。その後、YouTubeやSoundCloudなど、ネット上で楽曲を発表をするところから音楽キャリアをスタート。2017年12月より宇都宮と東京を中心にライブ活動を開始。2018年「やさぐれカイドー」「猿上がりシティーポップ」がSpotifyバイラルチャート上位にランクイン。
2019年Spotify『Early Noise 2019』に選出。夏フェス等の出演を経て、2020年1月TVドラマ「10の秘密」の主題歌「モノローグ」収録の1stフルアルバム「From DROPOUT」を3月4日にEPICレコードジャパンよりリリース。その後、TVドラマ「先生を消す方程式。」(2020年10月クール)主題歌や、『映画 えんとつ町のプペル』TVアニメ「約束のネバーランド」Season2など、話題作の書き下ろし提供を次々と発表。3月3日(水)に2nd Album「FIZZY POP SYNDROME」を発売。
2021年8月から「2021 BOAT RACE TVCMイメージソング」を担当。「ナイトダンサー」を書き下ろした。
2022年2月6日には、ABCテレビ・テレビ朝日放送の1月期ドラマ『封刃師』主題歌となっている新曲「見て呉れ」を配信リリース。さらに3月9日には、3枚目となるオリジナルフルアルバム「ONE MORE SHABON」の発売が決定。「一鬼一遊 PRE TOUR Lv.3」と題して3月には、自身初のホールワンマンを地元栃木県にて開催し、その後4月には全国10カ所11公演を開催。10月には東阪ホールツアー「一鬼一遊TOUR Lv.4」を開催。11月23日には「SKETCH」(アニメ「僕のヒーローアカデミア」第6期エンディングテーマ)をリリースした。
2023年3月には、自身初となるソロツアーを東名阪Zeppにて開催。そして同年7月26日、自身初となるライブ映像作品「一鬼一遊TOUR Lv.4 at Nakano Sunplaza Hall」を発売、同日には、約半年振りとなる新曲「蛍」を配信リリース。さらに新たなツアー「走光性の鳴り方TOUR」を実施し、12月には自身最大規模TOKYO DOME CITY HALL公演をSOLD OUTさせ、「SCRAP BOOOO」を配信リリース、2024年3月には最新曲「ソニックムーブ」を配信リリースした。
2024年8月には最新曲「Lonely cocoa」を配信リリースし、本楽曲が収録された自身4枚目のアルバム『Good Night Mare』が9月25日にリリースとなる。そして、同アルバムをひっさげた全国10か所を巡るツアー「秋山黄色 NON-REM WALK TOUR」を10月より開催した。
▽オフィシャルサイト:
https://www.akiyamakiro.com/