(初出:23/05/07)
[ライブリポート]
2023年1月23日に、The Street Slidersのデビュー40周年を記念してオフィシャルサイトが立ち上がり、トリビュートアルバムとオリジナルアナログマスターをリマスタリングしたオリジナル盤の2枚組『On The Street Again -Tribute & Origin-』が3月22日リリースされることが告知された。
そして、その4日後の1月27日に、5月3日に日本武道館にて、The Street Slidersが解散以来22年ぶりにライブ”The Street Sliders Hello!!”を行うことが発表になった。
数多のバンドが、解散もしくは活動休止した後、年月を経た末に再始動してきた中、もっともそれを望まれる存在でありながら実現しなかった、The Street Slidersの再集結。
HARRY(村越弘明)と蘭丸(土屋公平)のユニットであるJOY-POPSは、2018年にThe Street Sliders解散以降では初めてのツアーを開催し、その後も2020年、2022年とライブを行ってきたし、音源のリリースもあった。しかし、そのアクションがThe Street Slidersにつながることはなかった。それをファンは皆知っていただけに、このたびの再集結は、日本中のファンに、まさに驚きをもって迎えられた。
この日の日本武道館は、ステージの真後ろまで含む360度、2階のてっぺんまで……いや、さらにその最後方の立ち見スペースまで、オーディエンスで埋まった状態。個人的に、武道館で360度観客を入れているライブは、過去にも何度か経験があるが、この日のように、全角度が2階のてっぺんまでびっしり入っているのを見たのは初めてだった。
この日のステージは、2階の最後部まで人を入れても極力見切れがないように、ステージの両端を幕で覆ったりせず、天井と床が完全に分離した、特殊なデザインが採用されていた。申込者の数分の一だったという、チケットを手にできた幸運な14,000人(普段の武道館はマックスでも9,000?10,000人ぐらい)が、この歴史的瞬間に立ち会った。いや、生中継で立ち会った人を含めると、その数は何十倍、何百倍にも及んだであろう、と思われる。
この日、The Street Slidersが演奏したのは、本編15曲、アンコール2曲の全17曲。開演前のBGMが鳴っている時点で、もうハンドクラップや歓声が起こっていた場内は、客電が落ち、JAMES(市川洋二/ベース)、ZUZU(鈴木将雄/ドラムス)、HARRY(村越弘明/ボーカル&ギター)と蘭丸(土屋公平/ギター)の順にメンバーが登場すると、22年待ち続けていたファン達による、会場が揺れる程の歓声が日本武道館を包んだ。
1曲目は「チャンドラー」(1984年)、2曲目「BABY BLUE」(1995年)、次は『天使たち』(5thアルバム/1986年)のリードシングルで、リミックス・バージョンもよく知られている「Angel Duster」、4曲目は「Let’s go down the street」(1985年)──。と、前半は様々な時期のアルバムからピックアップされたミドル?スローな曲が中心になった構成。そして「one day」「すれちがい」「Pace Maker」と、初期の曲が続いたその流れは、「ありったけのコイン」で最初のピークを迎えた。
なお、「チャンドラー」でステージのセンターでギターソロを決め、その後HARRYの傍らに行って弾いた蘭丸は、それ以降も何度もHARRYと向かい合ってプレイした。
「ありったけのコイン」を歌い終え、『サンキュー』と笑顔を見せたHARRYは、『それじゃあ、新しいやつを』と、「曇った空に光放ち」と「ミッドナイト・アワー」の2曲を聴かせる。前者は2021年、後者は2022年に、JOY-POPSで発表した曲である。言うまでもなく、この4人で鳴らされるのは初めて。「ミッドナイト・アワー」を歌い終えたHARRYは、右手の人差し指を掲げるおなじみのポーズを、三回続けてやってみせた。
HARRYによるメンバー紹介を経て、『公平が歌うぜ!』と叫んで「天国列車」へ。蘭丸のサイケデリックな声による「はしれ はしれ」が武道館に響く。間奏とアウトロでは、HARRYがギターソロ。そして『OK、JAMESが歌うぜ!』と始まったのは「Hello Old Friends」。ボ・ディドリー・ビートにのってJAMESが力強く歌うこの曲では、HARRYがソロを奏で、蘭丸がそれを引き継ぎ、最後にZUZUが独奏を聴かせた。
いよいよライブも後半、13曲目は「So Heavy」。1983年リリースのセカンド・アルバム『がんじがらめ』のリード曲である、軽快でアッパーでアグレッシブなリリックが載ったこの曲で、オーディエンスが一斉に爆発。HARRYの歌声は、サビの終わりの「So Heavy!」のリフレインのところ、この歌の最高音部まで、悠々と届いている。その熱い空気は、続く「Back To Back」でさらに昂り、女性客の悲鳴のような歓声も、男性客の怒号のようなメンバーを呼ぶ声も、いっそう大きくなった。
が、歌い終えたHARRY、『じゃあ最後の曲』。大半が大人のオーディエンスとは思えない『えー!? 』という声が武道館を満たす。そんな素敵に大人げない大人たちに、最後に「風の街に生まれ」が贈られた。
アンコールは、「のら犬にさえなれない」。イントロが鳴った瞬間に、14,000人が『きたっ!』という空気になった。マスクの上からでもわかるくらい、多くの人が一緒に口ずさんでいる。そして、この再集結に関わったすべてのスタッフとオーディエンスへのHARRYの感謝の言葉を経て、ラスト・チューンは「TOKYO JUNK」。
場内が明るくなり、「So Heavy」から「Back To Back」の時以上の熱気が武道館を満たす。演奏を終えた4人は、楽器を下ろしたあとも、しばしステージに留まり、自分たちをぐるりと囲んだ14,000人に挨拶し、別れを惜しんだ。HARRYが蘭丸と肩を組むと、ワッと歓声が上がる。
4人が去ってエンドSEが流れた後、ステージの四方を囲む形で突如白い幕が落ちる。そこに手書き文字で書かれていたのは、
“ザ・ストリート・スライダーズ 秋・ツアーやるゼィ!“。
おそらく、誰もが予想だにしなかったライブツアーの発表で、興奮と歓喜の大きな歓声と拍手に包まれる中、22年ぶりの日本武道館公演は幕を閉じた。
(text by 兵庫慎司)
■「The Street Sliders “Hello!!” 」2023年5月3日 日本武道館 セットリスト
M-01 チャンドラー
M-02 BABY BLUE
M-03 Angel Duster
M-04 Let’s go down the street
M-05 one day
M-06 すれちがい
M-07 Pace Maker
M-08 ありったけのコイン
M-09 曇った空に光放ち
M-10 ミッドナイト・アワー
M-11 天国列車
M-12 Hello Old Friends
M-13 So Heavy
M-14 Back To Back
M-15 風の街に生まれ
~ENCORE~
EC-1 のら犬にさえなれない
EC-2 TOKYO JUNK
■ツアー情報
TOURタイトル:The Street Sliders TOUR2023 「ROCK’N’ROLL」
・日時:9月1日(金) OPEN17:30/START18:30
会場:埼玉 三郷市文化会館
ディスクガレージ webフォーム:
http://info.diskgarage.com
・日時:9月9日(土) OPEN17:00/START18:00
会場:福岡 キャナルシティ劇場
キョードー西日本
・日時:9月22日(金) OPEN17:30/START18:30
会場:名古屋 名古屋市公会堂
サンデーフォークプロモーション
・日時:9月29日(金) OPEN17:30/START18:30
会場:東京 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
ディスクガレージ webフォーム:
http://info.diskgarage.com
・日時:10月6日(金) OPEN17:30/START18:30
会場:仙台 トークネットホール仙台( 仙台市民会館)
G・I・P
・日時:10月21日(土) OPEN17:00/START18:00
会場:神奈川 KT Zepp Yokohama
ディスクガレージ webフォーム:
http://info.diskgarage.com
・日時:10月26日(木) OPEN17:30/START18:30
会場:大阪 フェスティバルホール
サウンドクリエーター
料金、先行受付、開始日時
イープラス最速先行「抽選」受付
料金:全席指定 ¥11,000(税込)
※KT Zepp Yokohamaはドリンク代別途必要
受付期間:5月3日(水・祝)19:30~5月14日(日)23:39まで
▽受付URL:
https://eplus.jp/tss2023tour/
※イープラス会員登録(無料)が必要となります
▽受付に関するお問合せ イープラス:
https://eplus.jp/qa/
■The Street Sliders プロフィール:
The Street Sliders(ザ・ストリート・スライダーズ) are…
村越弘明(HARRY) Vo,G
土屋公平(蘭丸) G,Vo
市川洋二(JAMES) Bass,Vo
鈴木将雄(ZUZU) Dr
1979年11月府中市民アマチュアバンド・フェスティバルでZUZU、蘭丸、客に酒をぶっかけて暴れ回る村越のステージに出会う。村越、市川共に20歳、蘭丸、ZUZU18歳。1982年春、福生の米軍キャンプで“リトル・ストーンズ”と呼ばれ人気を博する。12月映画「夜をぶっとばせ」の主題歌を担当、LIVEシーン収録の為、新宿ACBにてSPECIAL LIVE。1983年3月5日、アルバム『Slider Joint』、シングル「Blow The Night!」でEPIC/SONYよりデビュー。バンド結成当時から圧倒的なライブパフォーマンスで動員を増やし、1987年には初の日本武道館公演を行う。スライダーズは時代にとらわれることなく自らのロックン・ロールを貫き、ビートを叩き出したバンドである。その人気はファンのみならず、多くのアーティストやミュージシャンからも支持を得て、日本のロックシーンの絶対的存在となる。2000年10月、689本目のステージで解散。23枚のシングルと10枚のオリジナルアルバムを残す。その作品は今も大きな影響を与え続けている。2023年はデビュー40周年を迎えた。
▽The Street Sliders Information【40th Anniversary Site】;
https://tss40th.com
▽Official Site:
https://www.sonymusic.co.jp/artist/TheStreetSliders/